2586765 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

いなかの猫の天邪鬼部屋

第11話

OnAir~シーズン3・第11話~


# 放送局駐車場、朝

(ギョンミン、車から降りる。電話中。)

ギョンミン : うん。ごめん.... 重要な物なのにうっかりしてた.... 今日は会議があるから時間がなくて.......ごめん。頼むよ~。

(ギョンミン、放送局の中に入って行く。)


#ギョンミンとヨンウンのアパート、部屋

ヨンウン : (電話を切って) 久しぶりに家でゆっくりしようと思ってたのに...フンッ。


#放送局駐車場

(ヨンウンの車、入って来る。)

ヨンウン : (電話を掛ける) 私。着いたわ。上に行く?

ギョンミン : いや、今休憩室にいるんだ。これから人と会うから。休憩室に来て。

ヨンウン : 分かったわ。

(ヨンウン、書類を揃えながら下りて行く。)


#放送局休憩室

(ギョンミン、テーブルに座っている。女がギョンミンを見てためらい、近付く。)

女 : あの...イ・ギョンミン監督ですか?

ギョンミン : (見る)..はい....?

女 : こんにちは。今度新しく入って来た新入アナウンサーです。入社してからずっとお目にかかりたかったのですが...ドラマ局と報道局は離れていて...

ギョンミン : あ、どうも。.... でも、どうして...?

女 : (目を見開いて) ..はい...? あの...ファンなんです。ドラマをよく見ているんです。今後も良い作品を作り続けてください。

ギョンミン : ...はい...ありがとうございます。

女 : あの....(ノートを取り出す) サインを一枚だけお願いしてもいいでしょうか?

ギョンミン : (ぎこちなく) ...サインですか?...こんなので..

(ギョンミン、ためらいながらサインし、サイン紙を渡す。)

女 : (笑って挨拶する) ありがとうございます。お疲れ様です。(目礼して行く。サイン紙を見て嬉しそう。)

ギョンミン : (照れくさそうに立ち上がる) はい...

(離れた所で見ていたヨンウン、目を細めて息を吐き出す。目に力を入れて歩いて来る。)

ギョンミン : (ヨンウンを発見) あ!~ ごめん。時間を取らせちゃって。

ヨンウン : (腰に手を当てて見下ろす)....

ギョンミン : (見て苦笑する) やめろよ。実際以上に腹が大きく見えるぞ。

ヨンウン : (自分のお腹を見下ろす。手を下ろしてつんとして座る) 誰のせいよ?

ギョンミン : (笑い堪える) 何だよ?

ヨンウン : (睨む) あなたと一緒に出勤しようかしら。

ギョンミン : (考える) ....どうして?

ヨンウン : あー!....(扇ぐ) 暑い!

ギョンミン : (笑いながら立ち上がる) 待ってて。

(ヨンウン、憂鬱そう。ギョンミンを目で追い、周辺にいる女達に目をやり、自分のお腹を見下ろす。ため息をつく。)

(ギョンミン、飲み物を持って来る。)

ギョンミン : (ふた取ってやる) はい。

ヨンウン : (口を尖らせ、受け取る) ....

ギョンミン : (座って) どうした?

ヨンウン : (脹れて、見る) あなたの職場が気に入らないの。

ギョンミン : 何で?

ヨンウン : (脹れっ面をして) 女が多過ぎる。

ギョンミン : (呆れて) まったくもう...今更何言ってるんだよ。

ヨンウン : (憂鬱な悲しい目) こんな不様な姿でさえなけりゃ、そんな事は考えないのに...

ギョンミン : (ヨンウンのお腹を見る) 不様な姿だって?(声を殺して) こんなに綺麗じゃないか。

ヨンウン : (口を突き出す) ...(脹れっ面をしてギョンミンを見る)

(休憩室に女が入って来てきょろきょろ見回す。ギョンミンとヨンウンを見付けておずおずと近付く。)

女 : こんにちは。キム・ミンフィですが...イ・ギョンミン監督ですか?

ギョンミン : (見て立ち上がる) あ、こんにちわ。

ヨンウン : (二人見る)....(目でギョンミンに問う)

ミンフィ : (ヨンウンを見て) こんにちは。ソ・ヨンウン先生ですか?キム・ミンフィと言います。

ギョンミン : 去年のシナリオ公募当選作家。

ヨンウン : あ~ (ぎこちなく笑う) こんにちは。

ミンフィ : お会い出来て光栄です。大好きです、ソ・ヨンウン先生の作品...

ヨンウン : (気分が良い。得意そうに) .... ありがとう。

ギョンミン : (笑いを堪える)さあ...(ミンフィに) 座って下さい。

(ミンフィ、座る。ヨンウン、きまり悪そう。)

ヨンウン : (様子をうかがう) ....

ギョンミン : (ヨンウンをチラッと見てミンフィに) 当選作を読んでみましたが、いいですね。連絡して来た人はいませんでしたか?

ミンフィ : 二回電話がありましたが...まだ会う事は出来ていないんです....

(ヨンウン、横できまり悪そうにしている。きょろきょろ見回し、立ち上がってぶらついて入口の方へ行く。行く途中。入口の隣に置かれた鏡の中の自分の姿を発見。ヨンウン、ギクッとする。 'えっ!!!あれは誰??' 大きく目を見開いて自分の姿を上から下まで見る。周辺の様子をうかがい、すぐに鏡の前から退く。休憩室の中の女達とロビーを行き交う女達を素早く見る。唾を飲んで放送局出口に出る。ガラス窓に映った自分の姿に気持ちが沈む。頭を下げたまま早い歩みで駐車場に行く....)


#休憩室

ギョンミン : それでは、一度やってみてください。まず企画案から上げないとならないので、シノプシスから書いてもらって...

ミンフィ : はい、分かりました。

ギョンミン : 時間を下さってありがとうございます。(立ち上がる)

ミンフィ : (立ち上がる)ありがとうございます。お疲れ様です。(目礼して行く)

(ギョンミン、ミンフィのいた席の隣を見る。きょろきょろ見回す。出る。ロビーをきょろきょろ見回す。電話を取り出す。)

ギョンミン : (きょろきょろ見回し続けている) ....

ヨンウン : (消え入りそうな声で) もしもし...

ギョンミン : もしもし?どこにいるんだ?

ヨンウン : 車...

ギョンミン : もう帰るのか?どうして何も言わずに出て行くんだよ。

ヨンウン : ....

ギョンミン : もしもし?聞いてるか?

ヨンウン : ....聞いてる。

ギョンミン : ....どうしたんだ?

ヨンウン : 分からない。

ギョンミン : 急にどうしたんだ?

ヨンウン : 急に気分が落ち込んだの。家に帰る...

ギョンミン : (荒唐な) 一体何があったんだ? どうしたんだよ。

ヨンウン : 私も分からないんだから、聞かないで。惨めになるから...

ギョンミン : ..何だって???


#ギョンミンとヨンウンのアパート

(ヨンウン、玄関を開けて入って来る。脹れて居間のソファ-に座り込む。苦々しい表情...)

オキシム : (部屋から出る) もう帰ったの?昼食を食べて帰って来ると思ったら...

ヨンウン : (オキシムを見て、べそをかく) お母さん....

オキシム : (怪しげな) え?... どうしたの?

ヨンウン : (声を上げて泣く) ウッ....お母様~~~~~~~~あ~~~~~~~~~~


#ギョンミンとヨンウンのアパート、夕方

(玄関口に立っているギョンミンとオキシム。)

ギョンミン : (憂わしい) どういう事なのか、見当のつく事はある?

オキシム : 私がどうして分かるの?入って来るなり泣き出すんだから...

ギョンミン : (ため息) 一体何なんだ....(重い足取りで部屋に行く)

(ギョンミン、部屋のドアを開ける。ヨンウン、ベッドに横向きに寝ている。ギョンミン、心配になり、近付いて見る。ヨンウン、目覚めている。)

ギョンミン : 寝てるわけでもないのに、どうして無視するんだよ。人が来ても振り向きもしないで。

ヨンウン : (元気なく) 来てたの....?

ギョンミン : (顔をしかめる) 具合が悪いのか?(横に座って額に手を当てて) 熱があるのか?

ヨンウン : (大きくため息をつく) そういう事じゃないのよ....

ギョンミン : ....それじゃどうして?昼間、どうして何も言わずに出て行ったんだ?

ヨンウン : .....(べそをかく) 私...死にたい...

ギョンミン : (目が大きくなる) 何????

ヨンウン : (咽ぶ) とても惨めなの...死にたい...

ギョンミン : (呆れて言葉を失う) ...... どうしてそんな...?ヨンウン....


#放送局庭、ベンチ

(ギョンミン、電話する)

ギョンミン : 一体どうしてああなるんだ?

ソクヒョン : 死にたいって?

ギョンミン : そうなんだ。いきなりそんな事を。どうなってるんだ...

ソクヒョン : 彼女、今妊娠中だろう?

ギョンミン : ああ。

ソクヒョン : 何ヶ月だ?

ギョンミン : 来月出産予定だけど..?

ソクヒョン : (息を吐き出して) それはな...おそらく産前鬱病だ。

ギョンミン : 何?鬱病?

ソクヒョン : ああ。産後に掛かる産後鬱病はよく知られているけど、産前にも現われるんだ..

ギョンミン : そうなのか...? ...深刻なのか?

ソクヒョン : ...ちゃんと相談してみないと分からないが、軽度で終わる事もあるし、ひどい場合には自殺する事も...

ギョンミン : (驚く) 何だって?自殺??

ソクヒョン : (笑う) ひどい場合だってば。彼女はそこまでじゃないだろう? ...心配するな。

ギョンミン : (安心する) ....(ふと) しかし死にたいと言ってたのは...?

ソクヒョン : それがちょっと引っ掛かるんだが...ま、本当に気になるなら一度連れて来るんだな。

ギョンミン : そうなんだろうか....?(心配になる)


#ギョンミンとヨンウンのアパート、朝

ギョンミン : 一緒に行こう..な?

ヨンウン : (ベッドに布団を被って座っている) イヤ。

ギョンミン : (ため息) 君の今の状態は鬱病なんだ。出産前に一時的に来る症状。

ヨンウン : (身動きせず前だけ見て) つまり...出産すれば大丈夫という事だから、それまで待てばいいじゃない。

ギョンミン : .... そうじゃなくて...(ため息) それじゃ、どうしてこんな診断をされるんだ?

ヨンウン : 赤ちゃんのせいにするの?診断?赤ちゃんを生めば解決するんだから....

ギョンミン : (息苦しい ) それじゃ、それまでずっとこうしているのか?部屋から出ず、食事もせずに?

ヨンウン : 食事は....するわ。部屋で...

ギョンミン : このバカ.....


#ソクヒョンの病院、院長室

ギョンミン : 意固地なんだよ、まったく...(ため息)

ソクヒョン : ...いつからそうだったのか思い出せるか?

ギョンミン : (考える)一週間前に用事で放送局へ来たんだ。隣にいたんだけど急に見えなくなって。 何も言わずに家に帰った。その時からだな...

ソクヒョン : 放送局のどこへ来たんだ?

ギョンミン : 休憩室。

ソクヒョン : お前はその時何をしていた?

ギョンミン : 新しく始める短編の作家と会って議論してた。

ソクヒョン : 作家は女か?

ギョンミン : ああ。

ソクヒョン : 若くて?

ギョンミン : (目をぐるりと回して) ...そうだ...

ソクヒョン : そこには他の女もいたか?

ギョンミン : 女なら.... 放送局だから、そりゃいないわけは ....ないけど...

ソクヒョン : 他には?

ギョンミン : (考える) 彼女が入って来る前に女のアナウンサーが一人、俺にサインを貰いに来たけど...

ソクヒョン : 当然若くてスマートだったな?

ギョンミン : それは....そうだろう....

ソクヒョン : (手を組んでギョンミンをじっと見る)......

ギョンミン : ......(見る)......なぜだ?

ソクヒョン : (情けなさそうに) ....そこまで言っても分からないか?

ギョンミン : (眉間を狭める) ....?

ソクヒョン : .....俺が考えるに、彼女は外貌にかなり気を使う人だった...そうだろう?

ギョンミン : そうだ...俺と出会う前は、夕方6時以後は水しか飲まないほど敏感だった...

ソクヒョン : 分からないか?.....

ギョンミン : ....?

ソクヒョン : イ・ギョンミン....

ギョンミン : (目を瞬かせる)..うん?

ソクヒョン : .....突然頭が固くなったのか?分からないか?

ギョンミン : (眉間に皺を寄せて考える) ......






(原作出処:sonkhj1116さんのブログ



© Rakuten Group, Inc.